なんか長くて足が生えてるやつ

とっ散らかった文章の場。夢 感想 メモ 脳内 日常

「神様」

川上弘美
すごく好きな作家だ。
最も。

ほんとうは好きだなんて言葉では、言い表せないくらい。

今の自分は、彼女の作品に少なからず影響されて形作られていると思う。

なんだか息が詰まっているとき。
ぜんぶが嫌になったとき。
こころの中が空っぽになったとき。
さみしいとき。かなしいとき。なきたいとき。

そんなときに川上弘美の作品を読む。
しんとして、すうっと落ち着いてくる。

精神安定剤なんてものじゃない。
こころのよりどころ。

そんな彼女の作品の中でも、
「神様」は、すごく、いい。

「神様」 川上弘美 著 中公文庫
デビュー作である「神様」を含む、
九つの物語が収録された短編集。
ドゥマゴ文学賞紫式部文学賞受賞。

表題作である「神様」から物語は始まる。

三つ隣りに越してきたくまに誘われ、
「わたし」とくまは、川原に散歩に出かける。

ひとはひと。くまはくま。
その垣根の上に二人は立っている。

なんだかしみしみとしていて、
でもなんだかこころがあったまるような話。

この後、
「夏休み」「花野」「河童玉」「クリスマス」「星の光は昔の光」
「春立つ」「離さない」「草上の昼食」と、作中の時間は流れ、
季節ごとに少し不思議な出会いと別れの物語が描かれる。

草の上の昼食」で、くまは再び登場する。

「わたし」とくまは久しぶりに散歩に出かける。

草原で昼食をとり、うとうととくまに寄りかかっていた
「わたし」に、くまは故郷に帰るのだとつげる。

「人と熊は違うものなんですね」目を閉じきると、クマはそっと言った。
違うのね、きっと。くまの吠える声を思い出しながら、わたしもそっと言った。
(P.188)

故郷に帰ったくまから「わたし」へ手紙が届く。
差出人の名前も、住所もなく、消印も読めない手紙。
「わたし」は、机の奥へくまに宛てた返信の手紙をそっとしまう。

届かない手紙を思いながら、「わたし」が眠りにつくところで
この物語は終わる。

ぼたぼたと泣いた。
もうくまに会うことはないのだと思った。
くまとは違うものなのだと思った。
読みながら、さみしくてさみしくて泣いた。

この本は、何度読んだろうと思うくらい読んでいるのに、
読むたびに切ない気持ちになる。

そして、くまと過ごした日々を思う。

(君はくまと一度だって出会っていないのに。と思うことだろうが、
それには目をつぶっていただきたい)

これだけ長く書いたが、
これは前置きだ。
いかに「神様」という作品を愛しているか。
それを先にお知らせしておかねばと。

まだ長くなりそうなので、続きは次の記事に。