「神様 2011」
2011年9月20日、「神様 2011」が発行された。
このことを知ったのは、10月16日。
ああ、表紙でも変わったのか知らんと、
作品紹介の帯を眺めて、愕然とした。
あの1993年に発表された「神様」を、2011年の福島原発事故を受け、
新たに書きなおしたのだと。
息が止まった。
手が震えた。
なんてことだ。
そう、思った。
平和で、あってくれればそれでよかったのに。
くまと「わたし」が日常をすごしてくれていればよかったのに。
泣きそうだった。
読むのが、怖かった。
家に帰っても、このまま読まずにいようかと思った。
自分が読まずにいれば、彼らの世界は変わらない。
そんな気がした。
それでも、そんなことはなくて。
読まなくちゃいけないな。と、思った。
この本には、1993年の「神様」、「神様 2011」の
2話がこの順番で掲載されている。
いつもと変わらない「神様」を
せかせかとした気持ちで読み終えた後、
「神様 2011」へと足を踏み入れた。
そこには日常があった。
3.11以前では考えられなかった日常が。
今ではもうすっかり耳慣れてしまった言葉たちが、
彼らの世界にも存在していた。
やわらかくって、あたたかで、少し不思議で。
やさしいあの世界が。
サンクチュアリは崩壊した。
それでも
彼らは彼らの世界で生きていた。
それを見ないふりをしていくことはできない。
真摯に受け止めて、これからできることを
考えなくてはいけない。
そうは思いながらも、ただ悲しかった。